精神障害者雇用管理マニュアル
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精神分裂病の場合
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I.雇用管理上の配慮
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1. | 障害について | |
・ | 「精神障害者の雇用を検討しているが、病気が分からないのでどのような段階になれば雇用が可能であるか」 | |
障害者就業・生活支援センターに来所されて就労相談の多くは、慢性分裂病であり、発病してからの経過の長さではなく、[社会生活に対する常識]や[日常生活の状態]が問題になります。 | ||
○ | ポイントとして「定期的に通院されているか」「幻覚・妄想が目立たない」「働く意 欲がある」「1人で生活できる」「障害を受け入れているか」などです。 | |
事業所・就労支援関係者のポイントとしては、「睡眠、食欲が規則正しくできているか」「生活リズムが確立されているか」「余暇を上手に過ごすことができるか」「心配事や不調の際に助けを求める事ができるか」などです。 | ||
○ | このように自分で服薬管理や体調のコントロールができ就労にチャレンジするという気持ちにゆとりがあり、心理的に孤立していないなどです。 | |
2. | 服薬・通院は雇用されても必要であるか | |
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・ | 服薬は雇用を考える上で大切な鍵であるが、なかには勝手に服薬を中止したり副作用があると言って薬を飲まないで再発した苦いケースがいくつかありました。たとえ安定期であっても服薬の継続は必要です。 | |
・ | 通院の必要性についてこの病気の一番難しい課題は「病気にかかる前と違った社会生活の仕方」を身につけねばならず病気に関する率直な対話はかかせなく同じ病気にかかっている、当事者間の交流も社会体験を積む上で大事である。 | |
3. | 精神障害者の雇用を考えていますが、知的障害者については雇用経験があるのですが雇用管理上どのような違いがあるのか | |
・相違点の一つは | ||
言葉での意志が比較的スムーズに伝える事ができ数や文字についての配慮があまり要らないという点です。 | ||
・ | 反対に問題なのは | |
一般的に職場の環境・対人関係・状況判断・集団への溶け込みが下手で作業能率に波がある事です。 | ||
「問題の対処については過度に敏感すぎる」このような傾向が強いようです。 | ||
・ | 知的障害者から学ぶ事は | |
作業能力にあまり波がなくコンスタントに仕事ができるが小回りができづらく引っ込み思案になるケースがある。 | ||
双方とも職場での臨機応変が苦手で新しい環境に慣れるのに時間がかかる。このような場合の対応方法として、「見守りながらその都度適切な指導を行う」「本人たちから見て頼れる人となる」「作業技能の反復化を図る」が必要である。 | ||
4. | 採用・配置について | |
○ | 採用にあたっての準備 | |
@ | 精神障害者はその症状に様々な波がありますが本人が自覚している波もあれば支援ワーカーが気付く波もあると思います。その様子によって休ませるなど職場での過度の緊張をほぐしてやり、再発を未然に防ぐことが大切である。はじめから、長時間労働は無理で短時間就労からのスタートが必要である。 | |
A | 精神障害者の就労を支援するもの(家族、友人、関係者)等の連携を保ち就労を支える体制をつくり、大がかりな受け入れ態勢などの委員会の設置よりも職場での周囲の人達の理解に基づく自然な関わりが何よりも必要である。 | |
5. | 精神障害者に適した仕事はどのようなものですか? | |
複雑な作業・臨機応変な判断が必要な仕事は苦手と聞いているが。 | ||
A、私ども障害者就業・生活支援センターの経験からいいますと精神障害者の特徴として | ||
1,臨機応変な判断が求められると苦手である。 | ||
○ | 職場での仕事についてマニュアル通りであれば問題は少ないが、仕事の内容が変化すると混乱を起こしやすい。 | |
2,動作が遅くなんだかぎこちない | ||
○ | 服薬の関係で起床後の生活リズムが遅く職場での仕事に就くためのエンジンのかかりが遅い。 | |
○ | 服薬と副作用の部分が分かりづらく障害の特性を知るため精神科医師を招いて学習会を開き研修に努めている。 | |
3,環境変化に弱く慣れるのに時間がかかる。職場環境に慣れるまでには時間がかかるがグループ実習ではスムーズに職場集団に溶け込んでいる。 | ||
個々の人によって違いますが、どの点について特徴があるのかは様々です。一般的に単純作業が好ましいとは言われているが、法人内での基礎的な作業訓練を行い、職場実習を通じて終了意欲が徐々にあがってくれば自然と作業能力も身についてきます。 就労後その能力を職場で活かすためにある一定期間ジョブコーチがマンツーマンで指導を行いサポート体制を組み立てれば相当複雑な作業や高度な作業工程であってもできる事が今実証されています。 それらはまず事業所の協力がなければできずジョブコーチは常に業務の打ち合わせを行い、時間をかけて職場内での訓練を施し仕事の配分も事業所側と相談しながらいくつかのポストへの配置を行っています。 |